助成金受賞者インタビュー
第一回 2025年度助成金受賞者インタビュー
名古屋工業大学大学院 工学研究科
工学専攻 生命・応用化学系プログラム
助教
安川 直樹 様
研究題目:
光駆動型ホウ素ラジカル発生を起点とした水分子の活性化法の開発と水素原子移動反応への展開
Q. 今回の研究の一番のポイント(強み)を、一般の方にも分かりやすく教えていただけますか?
近年、省エネルギー、SDGs、地球温暖化など、環境問題への関心が高まっており、有機合成化学者としても、社会に貢献できる技術の開発が求められています。その中で、我々は、豊富に存在し、低コストで、安全に利用できる資源として「水」に着目しました。ただし、単純に水を使うだけではなく、これまで我々が研究してきたホウ素ラジカルに関する技術を組み合わせることで、水を利用した新しいケミストリーを今回発見しました。これまで、高価な試薬を使用したり、取り扱いに注意が必要な水素ガスを利用していた還元反応を、水分子だけで実現できるようになります。
また、これまで実現が難しかった反応を、水分子を利用することで可能にすることも、本研究の大きな目標の一つです。さらに、同位体である重水などを利用することで、近年注目されている重水素化医薬品(heavy Drug)などの分野にも貢献できる技術へと発展する可能性があります。
Q. 今回の助成を通じて、当初の計画からどのような進展、または新たな発見がありましたか?
化合物の収率を向上させるために条件検討を行い、反応がうまく進めばスクリーニングを行ってさらに改善するという、トライアンドエラーを繰り返しました。今回の助成によって、その検討を1年間継続して行うことができました。研究は大きく方向性を変えることなく、当初の計画から大きく逸れることなく、予定していたペースで進めることができました。
Q. 今後の研究活動における、次なる挑戦や目標についてお聞かせください。
私の研究は、完全にアカデミックな基礎研究、学術の開拓というところに位置づけられています。その研究をさらに発展させていく先の目標としては、やはり社会実装になるかなと思っています。そこにつなげていくためには、まだ乗り越えなければならない壁があることも自分の中では理解しています。その部分を改善しながら研究を発展させ、実社会で活用できるものにしていきたいと考えています。
例えば、水素ガスを利用していた反応に代わるものとして、「水」を還元剤として利用する役割です。水素ガスは気体であるため、運搬することも大変ですし、保管や安全面にも課題があります。一方で、水を利用することができれば、どこの国でも、例えば海水などから得られる資源を利用できる可能性があります。そうなれば、さまざまな課題の解決につながる技術として発展させられるのではないかと考えています。
そのためには、さらに効率を高めていく必要があります。水素ガスを発生させるということではなく、水そのものを還元剤として利用するという新しい役割を開拓していくことが重要です。
水を還元剤として利用するという考え方を広げ、企業をはじめ、さまざまな方々に使っていただけるレベルまで効率を高め、廃棄物を出さない技術へと発展させていくことが、当面の目標かなと思います。
Q. 当財団の助成金は、使い勝手やサポートなど、どのような点で魅力を感じられましたか?
不満点は特にありません。使い勝手の面、助成いただいたタイミングという面でも非常に満足しています。特にありがたかったのは、研究費の使い方に関する自由度の高さです。通常の助成金では、さまざまなルールや制約が設けられていることも多いですが、貴財団の助成金は非常に自由度が高く、研究を進める上で大変助かりました。