Research Grants

助成金受賞者インタビュー

第一回 2025年度助成金受賞者インタビュー

東京科学大学 生命理工学院
特任准教授
小坂田 拓哉 様


研究題目:
視床下部のバソプレシン神経細胞がもつ多様な情報伝達機構の解明

小坂田拓哉様

Q. 今回の研究の一番のポイント(強み)を、一般の方にも分かりやすく教えていただけますか?

キーワードとなるのは「社会性行動」です。怒りや社会的逃避、最近では子育てなどにも着目して研究を進めていますが、これらは日常生活にも非常に密接な事柄です。
世界の様々な研究グループによって、社会性行動の発現に重要な脳領域や回路モチーフが少しずつ明らかにされています。一方で、脳内で働く分子に着目した研究も増えてきており、今回は神経ペプチドのひとつであるバソプレシンの重要性に着目しました。また、モノアミン系神経伝達物質についても研究を行っています。
神経ペプチドにはそれぞれに特異的な受容体が存在するため、受容体を標的とした解析によって、例えば過剰な怒りを和らげるような社会性を円滑にさせるために必要な要件を理解できる可能性があります。 将来的には、特徴的な社会性によって苦しんでいるひとの負担が少なくなるような成果を発信していきたいと思います。直接的な関与を証明することは容易ではありませんが、少しずつその機能を解明していきたいと考えています。

Q. 今回の助成を通じて、当初の計画からどのような進展、または新たな発見がありましたか?

もともとはバソプレシンをキーワードに本研究計画を進めていましたが、同じ脳領域に他の受容体が存在することが分かってきたため、現在はそちらの役割なども含めて研究を進めています。 もちろんバソプレシンの役割も重要ですが、より多角的に、各脳領域やその情報伝達の上流・下流が何をしているのか、そして脳が全体としてどのような働きをしているのかを理解したいと考えています。
バソプレシンなどの神経ペプチドの脳内挙動に関する研究においては、ペプチド動態を可視化するin vivoセンサーのシグナルが微弱であるという課題があります。自由行動下のマウスを用いた実験で試してみると期待通りに作用しない場合もあり、分野における発展途上の側面になります。
ただ、研究を進める中で、視床下部の様々な領域が有する文脈依存的な重要性については解析が進みつつあります。社会性を状況依存的に、あるいは行動の相手依存的に変化させるメカニズムについて、その端緒はつかめてきているので、今後の研究によって包括的に明らかにしていきたいと考えています。

小坂田様インタビュー

Q. 今後の研究活動における、次なる挑戦や目標についてお聞かせください。

研究の長期的な目標としては、大きく2つあります。一つは、将来的に疾患の要因や病態メカニズムを解き明かすことにつながるような研究を進めていくことです。私は社会性の制御基盤に関する研究を行っていますが、社会性の可塑性やその特徴は、ニュースなどでも取り上げられるように非常に注目されている分野です。これは成人だけでなく、子どもの発達にも関わる重要なテーマです。社会性の発現やその多様性に関わるメカニズムを理解すること、そしてその前段階となる変化を捉えられるようになることは、例えば自閉スペクトラム症(ASD)など特性を持つ方々や、そのご家族にとっても大きな意味があると考えています。そこにつながる研究成果を生み出すことが、最終的なゴールの一つです。
もう一つは、「そもそも脳は何をしているのか」という根本的な問いを明らかにすることです。例えば、怒りを感じている時やストレスを受けた時、あるいは過去の経験に基づいて行動するときに、脳内ではどのような変化が起こっているのか。その仕組みを少しずつ明らかにしていきたいと考えています。そのためには、一つの脳領域だけを見るのではなく、多角的な視点から、複数の脳領域がどのように連携して働いているのかを理解することが重要です。その中でも、私自身の研究の特色としては、経験によって変化する脳の仕組みや、社会性に関わるさまざまな「スイッチ」が様々な文脈でどのように制御されているのかという点に注目していることです。こうした視点をうまく組み合わせながら、研究を発展させたいと考えています。

Q. 当財団の助成金は、使い勝手やサポートなど、どのような点で魅力を感じられましたか?

助成していただいたタイミングが、私個人としては非常にありがたいものでした。また、助成金の用途についても自由度が高く、大変助かりました。
また、助成期間から今までにおける事務局の方々の対応も非常に親身なものでありがたく感じています。私は使途など分からないことがあると事務局へメールで問い合わせることが多いのですが、その対応は財団によってさまざまです。助成金の用途についても、例えば研究・居室環境を整えるための椅子などの購入や、パソコンや関連機器など、財団によって認められる範囲が異なります。「これは使用できません」と明確に決まっている場合もありますし、問い合わせたうえで難しいと言われることもあります。
そのような中で、貴財団では相談がしやすく、また、丁寧に対応していただけたことが非常にありがたかったです。現在は試薬など研究計画に直接的に関連するものに限らず構成員のための研究・居室環境整備なども必要になっているため、貴財団からの助成は本当に助かりました。改めて御礼申し上げます。

Research Grants

研究助成のご案内

助成金事業の募集要項等はこちらからご確認ください